緊急特集! SARSから身を守れ! 準備は今から

中国で開発された治療用処方、予防用処方

 中国では、衛生局(日本の厚生労働省にあたる)の対応の遅れがあって大流行となりましたが、最前線に立つ医師は必死の努力を続けています。困難なのは、原因がなかなか特定できないことと、抗生物質が効果が無く、特効薬的に効果を現す薬品で対応することができないことです。そのような状況下で注目されたのが漢方(中国では「中医学」という)でした。
 中国は広大なので、地域によってその風土に対応した漢方理論が発達しましたが、広東省などは、湿度・気温が高いために昔から伝染病や感染症がたびたび大流行していたため、「温疫論」「温病論」という、高熱を発する症状の治療理論が発達しました(「温疫」とは伝染病をさす)。
 伝えられているところでは、北京市と広東それぞれにおいて西洋医学の医師と中医師が共同で論議し、それぞれの風土慣習や気候及び発病特徴に応じた推薦処方を発表しました。これらの処方は、病院などで配布されたり、インターネットでも公開されました。
 このようにいち早くSARSに対して、対策処方が発表されたのもこれまでの研究蓄積があったことと、もともと漢方理論というものが、西洋医学的な体の「部分」を治すのではなく体のバランスを正すという思考法によっているためだといえます(西洋医学では、原因がわからなければ対処法が限定されます)。
中国の医学者が推薦する予防処方免疫力「衛気」を強化する玉屏風散
代表的な清熱解毒薬、天津感冒片一躍有名になった「板藍根」はのど痛にいい
「衛益顆粒」「天津感冒片」「板藍茶」「板藍のど飴」を販売しているところ

中国の医学者が推薦する予防処方

中華中医学会の推薦処方 北京の中西医学専門家が集まり検討した処方
予防目的

生黄耆15g、防風10g、金銀花15g、板藍根15g、生甘草5g、柴胡10g、黄ゴン10g、貫仲15g、蒼朮10g、生イ仁30g、カッ香10g

広州中医薬大学の専門家チームによる基本処方
予防目的

生黄耆15g、防風15g、金銀花30g、板藍根30g、甘草10g、白朮10g、蒲公英30g、紫花地丁30g、菊花10g、茵陳15g
治療目的
蒲公英30g、紫花地丁30g、板藍根15g、茵陳15g、ヨクイ仁30g、葦茎30g、生地黄15g、玄参15g、丹参10g、黄連10g、黄ゴン10g、竹瀝10g、甘草10g

「黄耆」「防風」「金銀花」「板藍根」に注目  中医師の陳志清氏によれば、これらの処方は、「清熱解毒」を重要視し、「扶正去邪」(原文での「去」は衣ヘンに去)を基本原則としているとのことです。
 「清熱解毒」とは、熱を下げ、病原体を抑制することをいいます。
 「扶正去邪」とは、体の防御力(免疫力)を高め、体に悪いものを除くことをいいます。  西洋医学的に強引に例えるならば、「清熱解毒」とは抗生物質に似たような働きと解熱剤のような働きといえるかもしれませんが、「扶正去邪」は一口で例えることが難しい内容です。そのような働きを持つ薬が新薬には見あたらないためです。
 ここで注目したいのが、予防目的処方に共通して使用されている、「黄耆」「防風」「金銀花」「板藍根」です。
 「黄耆」は、その効果のよさ、使いやすさ、副作用のなさから、横綱クラスにランクされる「補気」の働きを持つ漢方生薬です。滋養強壮薬としておなじみの朝鮮人参も「補気」薬ですが、こちらは体に元気をつける働き、「黄耆」の補気は、免疫力ともいえる「衛気(えき)」の働きを生みだし強化する補気です。「黄耆」には玉屏風散をはじめ、たいへん多くの処方があります。
 「防風」はその名のごとく、皮膚や粘膜を堅固にし、外部からの侵襲を防ぐ働きを持っています。
 「金銀花」は、代表的な「清熱解毒」薬です。高熱を発する風邪、扁桃腺炎などに使われます。「金銀花」を主薬にした代表的な処方に天津感冒片があります。
 「板藍根」は、中国では抗菌作用が広く知られており、今回も市民が競って買い求め市中ではたいへん品薄状態になり高値を呼んでいると報じられました。
 「甘草」は、症状に対するのではなく、生薬を体になじませるといった働きを持っています。
   つまり、玉屏風散+天津感冒片という組み合わせ
 直接の働きはない「甘草」を除いた主要4生薬に改めて注目すると、これは
 「衛気」作用(玉屏風散)+「清熱解毒」作用(天津感冒片+板藍根)+α
 という構成だと解釈できます。
 
 この他に、免疫力を高める生薬や処方としては、「西洋人参」「シベリア人参」「補中益気丸」などがあります。

免疫力「衛気」を強化する玉屏風散

 玉屏風散の構成は、「黄耆」「防風」に加えて広州中医薬大学の専門家チームの予防処方にある「白朮」が加わります。白朮は、消化機能を助けることで補気の働きをバックアップするという後方支援、側面支援的役割を果たします。
 玉屏風散(日本で販売されている商品には「衛益顆粒」(製造元:中国・長沙)があります)という処方は、もともと花粉症、風邪、インフルエンザ、ぜん息になりやすい人の体質改善(免疫力を高めたり、抗体のバランスを調整する働き)に向いた処方です。
 人の体の免疫機構は精妙にできており、マクロファージやT細胞、B細胞、NK細胞などがその必要に応じて体表を巡回したり急遽生み出されて現場に駆けつけ、細菌やウイルスを食べてしまったり直接攻撃で体を守るというシステムになっています。
 この免疫細胞が順調に生み出されなかったり、体表を巡回しなかったり、外部から侵入してきたぞという情報の伝達回路が機能しないと、やすやすと細菌やウイルスの侵入や繁殖を許します。
 ウイルスや細菌の侵入場所は、90%が粘膜からですから、粘膜のバリア能力を高めることが大事です。その働きは「補気」の主要な働きです。
 マスクや手洗いはもっとも基本的な防御法ですが、からだ全てを覆うことはできません。体の中から体全体にバリアを張る方法、それが「補気」の主要な働きの一つなのです。
 玉屏風散は、このように治療目的としてではなく予防目的と考えるといいでしょう。体質改善効果ですから即効を期待するというわけにはいきません。ただ、日本では昨年6月に厚生労働省の認可が下って国内販売が開始されましたが、暮れから飲み始めた人はほとんどが今年の冬は風邪をひかないか例年に比べ軽いか、また花粉症も症状が軽いといっています。効果を実感するまでに飲み始めてから早くて2週間、一般には3〜4週間をみておけばよいようです。SARSの予防として飲むなら、今から飲み始めておけば間に合いそうです。冷房病や夏風邪などにも強くなるそうですから、夏に弱い人にもいいかもしれません。

代表的な清熱解毒薬、天津感冒片

 天津感冒片は、日本では発熱やのどの痛むときの風邪薬として販売されています。やはり衛益顆粒同様中医学の処方であり中国で製造されています。金銀花とともに金銀花同様の清熱解毒の薬効を持つ連翹が主薬として配合されています。日本の風邪というと以前は寒気がする風邪が多かったですが、暖房が行き渡ったためか、体がかっかするような熱型の風邪が増えてきました。しかしそうしたタイプ向きの漢方薬は以前は見あたりませんでした。天津感冒片は、日本におけるそんな不足を補う役割を果たす漢方薬です。
 背中を冷たい手で触って、ぞくぞくするようなら体を温めるタイプの「葛根湯」など、ひんやりするのが気持ちがいいようなら体の熱を冷ますタイプの「天津感冒片」と覚えておくと、簡単に症状にあった薬選びができます。
 SARSの予防目的の処方にこのような治療目的の生薬が加えられているのは、すでに流行している地域であるためと考えられます。人混みから帰ったり、風邪気味の人と会った後などは予防的に飲んでおくと良さそうです。

一躍有名になった「板藍根」はのど痛にいい

 板藍根は、香港や北京で板藍根を求める人々の写真や価格が高騰したというニュースが報道されて一躍有名になりました。日本ではこれまであまりその名前を耳にしなかったかもしれませんがすでに「板藍茶」とか「板藍のど飴」といった健康食品として販売されています。かつて、上海でC型肝炎ウイルスが流行したとき、中国全土から板藍根が上海に集められ肝炎の流行をストップさせたという話もある程で、その抗菌作用には定評があります。板藍根がSARSの抑制作用を持つか否か、意見は分かれているようですが、予防目的、治療目的全ての処方に加えられているところを見ると、専門家は一致してその効能を認めていると思われます。
 SARSウイルスに効くか否かは別にして、風邪でのどが痛むときなど板藍茶でうがいし天津感冒片を飲み、板藍のど飴をなめるほうが、眠気を催し胃腸に影響のある薬を飲むよりよほどよいと思います。
 外出から帰ったときに板藍茶を飲むといった使用法がいいと思います。体を冷やす作用があるので、長期連用は避けることと中医師はアドバイスしています。

「衛益顆粒」「天津感冒片」「板藍茶」「板藍のど飴」を販売しているところ

 この項で紹介した上記商品は、いずれも日本の薬局・薬店で販売されています。「衛益顆粒」「天津感冒片」は医薬品であり厚生労働省の認可を得て輸入販売されているものです。販売している薬局・薬店については、発売元(イスクラ産業株式会社)にお問い合わせください。http://www.iskra.co.jp
記・『健康情報館』編集部