藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第32回】

かゆい湿潤性に「華陀膏」
乾燥性は「土槿皮チンキ」

 毎年暑い夏が長くなるようで、水虫に悩む季節も長びいているようです。
 現在、中国の水虫薬としては二種類が輸入されています。
 一つは「華陀膏(かだこう)」です。このクスリは角質軟化作用と殺菌作用のあるサリチル酸に、生薬のろう梅油(ろうばいゆ)を加えた軟膏で、日本のバレーボールチームが中国に遠征して持ち帰って以来、わが国でも使われ始めたといわれています。
 蝋梅は、梅に先がけて黄色の花をつける植物で、日本では薬用というよりは観賞用庭木として愛用されています。この花やツボミからとった油には、抗菌作用や皮膚の再生を促す働きがあり、肌に深く浸透して治療効果を高めます。
 もう一つは液剤の「土槿皮(どきんぴ)チンキ」です。これは中国で白癬菌の治療に広く使われているマツ科の植物、土槿皮の抽出液にサリチル酸と安息香酸を加えたもので、華陀膏と同じように一日二回ぐらい患部に塗布します。
 ジュクジュクとかゆい湿潤性の水虫には華陀膏を、乾燥性のものには土槿皮チンキを使い分けるとよいでしょう。
 「皮膚は内臓の鏡」という考え方をもつ中国漢方では、頑固な皮膚病の治療にしばしば内服薬を併用します。
 人の体は酸性に傾くと血行が悪くなるといわれています。皮膚の細胞がイキイキと活動し、みずみずしさを保つためには、サラサラの新鮮な血液が欠かせません。血行が停滞する、いわゆる“お血(おけつ)”の状態になると、皮膚疾患にもかかりやすくなります。水虫の治療として、よくお血の治療法がとられるのはこのためです。
 足のほてり感が強く、靴の中がムレやすい人には、血熱をさまし、体液を増加させる働きのある地黄や黄ごんを処方した漢方薬が使われます。「温清飲(うんせいいん)」「六味地黄丸」はその代表的な方剤といえます。さらに、皮膚の炎症をおさえる「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」の併用で水虫を根治させた例も多いものです。どの内服薬を選ぶかは、患部の状態だけにとどまらず、全身のさまざまな“証(症状)”を総合的に把握することが必要です。やはり専門家に相談すべきでしょう。水虫の治療には局所治療とともに、体質改善などの根本治療を心がけたいものです。
 
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)