藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第25回】

みずみずしい体を保つ
海馬・鹿茸 動物性も豊富

 「最近、すっかりスタミナ切れでねー」そんなボヤキを聞きつけて、愛用の強壮・強精剤をすすめてくれる同僚杜員がいたりするものです。
 だが、ちょっと待ってください。確かに強壮・強精効果のある漢方薬は、どれも栄養豊富な滋養剤ですが、効き目にはそれぞれ特長があります。その特長によって、強壮・強精剤が四つに大別できることは、前回お話ししました。
 今回は「養陰薬」と「助陽薬」を取り上げます。
 養陰薬とは、陰分を補うクスリ。陰分とは、体をみずみずしく保つ津液(体内の水分)のことです。若い人の皮膚には張りがあり、年とともにシワが目立ってきます。これは津液の消耗によるもので、老化現象の一つです。また、津液の消耗は年齢に関係なく、心身の過労によっても引き起こされます。
 年齢や過労によって津液の減少した体は、オーバーヒートぎみのエンジンに似て少し熱をもち、手足のほてり、のぼせ、口渇といった症状で表れてきます。養陰薬は、こんな症状、つまり陰虚証(陰不足)に効果を発揮します。
 陰虚証を治す基本薬は「六味地黄丸」、症状によっていくつかの生薬を加味したクスリを使い分けることもできます。六味地黄丸に麦門冬と五味子という生薬を加えた「八仙丸」は、陰虚証でセキや夕ンがのどに絡み、すっきりしない人向きです。陰虚で、目がしょぼしょぼ疲れるという人には「杞菊地黄丸」、不眠・どうき・息切れなどの症状のある人には「天王補心丹」、足腰がだるくイライラを伴う人には「知柏(ちばく)地黄丸」が効果的です。いずれも六味丸の仲間です。
 次に、セックスの能力を高めるための「助陽薬」です。エネルギー不足による(体の冷え、疲労けん怠、足腰のだるさなどを訴える陽虚タイプの人のクスリで、体を温めることによって性機能の改善をはかります。
 いわゆる強精作用の強い生薬としては、朝鮮人参(にんじん)がその代表格。さらに海馬、鹿茸、蛤かい(ごうかい)など、中国漢方には動物性のものが豊富にあります。朝鮮人参と鹿茸(鹿の幼角)を中心とする「参茸補血丸」、タツノオトシゴを乾燥させた海馬を主剤とした「海馬補腎丸」、動物の睾丸(こうがん)とペニスの乾燥物を主薬に朝鮮人参などを加えた「至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)」などがよく知られています。なお「至宝三鞭丸」は、赤ら顔でのぼせぎみの人、高血圧の人にはすすめられません。効果が強いだけに、服用には注意が必要です。
 
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)