藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第19回】

肩こりにも様々な原因が
体の証と原因によってぴったりの養生法が


 四十肩とも五十肩ともいわれる肩こり。ストレスいっぱいのサラリーマン生活では、程度の差こそあれ、肩こりは避けて通れないものです。
 ひとくちに肩こりといっても、筋肉を偏って動かした時、血圧が高い時、細かい仕事をした時など原因は人それぞれです。なかでもサラリーマンに多いのが、運動不足や精神的・肉体的ストレスからくる肩こりでしょう。大半は時間とともにこりも痛みも軽減されますが、慢性に移行するものもあって油断は禁物です。
 なんとなくイライラする、つまらないことが気になる、何をやっても面白くない。こんな状態を中国漢方では「肝気鬱結(かんきうっけつ)」といいます。これは、わが国のサラリーマンにごく普通にみられる現代病の一つです。
 この肝気鬱結が肝の疲れからくることは以前にもお話した通りです。精神的なストレスが強いと、脳は大量の血液を消耗するようになり、血液を供給する肝の負担が増大します。肝の疏泄不良による血行障害は、当然ながら四肢の筋肉にも影響を与えることになり、こりや、こむらがえりとなって現れます。
 サラリーマンの精神的ストレスからくる肩こりには、加味逍遥散(かみしょうようさん)が効果的です。このクスリは、肝の働きを強める柴胡、芍薬などの生薬を中心に、血液を増す当帰、胃腸の働きをよくする白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、生姜(しょうきょう)からなる「逍遙散」に、のぼせやイライラをとる牡丹皮(ぼたんぴ)、山梔子(さんしこ)を加えた方剤です。
 これに、肝腎を強める「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」や体を温める作用のある「葛根湯(かっこんとう)」を併用すれば、複数の処方の相乗効果で効きめはさらに確かなものとなるでしょう。
 中国漢方では、本来スムーズに流れるべき血液が、なんらかの原因で流れなくなったり、流れにくくなった状態(うっ血、血栓など)をお血(おけつ)と呼び、病気の引き金になるものとして警戒しています。
 このお血も肩こりの原因となります。古人が「通じざればすなわち痛む」と言ったように、肩や首筋のこりもそのようにして起きる痛みの一つです。このお血を治すクスリとしては、「冠元顆粒」「桃核承気湯」「桂枝茯苓丸」などがありますが、お血やその他の状態によって使い分けが必要です。その選定は専門家に相談するのが無難でしょう。
 入浴時に肩を湯の中に十分ひたし、肩から腕の筋肉をもみほぐすことは、肩こりの予防につながります。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)