藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第17回】

若々しい髪を保つ不老長寿のクスリ
白髪や養毛効果も


 朝、髪の毛をとかすと、妙に抜け毛がひどい。あわてて養毛剤のお世話になってはみたものの、効果なし。このごろは、お髪の後退が一段と加速してきたような気がする……。
 今回は抜け毛のお話です。このところ鏡を見るのがユーウツだ、シャンプーが怖い、といわれる皆さんだけがお読みください。
 中国漢方では、抜け毛や白髪をどのようにとらえているのでしよう。
 コマーシャルでもよく知られるように、古来、中国では髪を血餘(けつよ)と呼んで、血液の変化したものと考えています。さらに毛髪は腎(じん)の健康状態を反映するものだともいわれています。
 血は五臓六腑(ぷ)に栄養を送ることで、皮膚や毛髪、爪などを養っています。血液そのものの栄養が不足したり、流れが悪くなると、目がかすむ、爪がもろくなるなどの症状に加えて、髪の毛の色つやが悪くなったり、細くなったり、はたまた脱髪したりと、さまざまな症状がでてきます。これを中国漢方では「血虚」と呼んでおり、症状改善のためのクスリとしてさまざまな補血剤が使われています。
 なかでも毛髪によいとされているのが何首烏(かしゅう)です。これはツルドクダミの塊根で、製品としては「首烏延寿片(しゅうえんじゅへん)」があります。中国では不老長寿のクスリとして愛用されており、便秘、高脂血症、貧血、強壮など幅広い効能が知られ、長期の服用によって白髪や養毛効果もあるといわれています。また、髪の毛は骨や爪と同じように腎の働きでつくられるもの。腎の働きが低下した腎虚の状態では、老化現象(年齢を問わない)の一つとして髪の毛が白くなったり、薄くなったりします。
 さらに五臓六腑から言えば、腎は肝と密接な関係にあり、血液の貯蔵庫・肝の機能低下が腎に影響して、白髪や脱髪をひき起こすこともあります。肝は精神的ストレスに弱く、長期にわたるイライラで髪が抜けたりする人がいることは、よく知られているところです。
 腎の衰弱を補う補腎薬には「六味丸」などがあり、これらのクスリを「首烏延寿片」と併用することによって治療効果を高めます。ストレス性の脱髪には、肝に作用する「加味逍遙散」の併用がいいようです。  ひところ大ブームになった「101」や日本の数ある育毛剤とは違って、身体の体質改善によって養毛を促す中国漢方ならではの治療法は、もっと評価されてよいものだと思います。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)