藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第15回】

アレルギー体質、アトピーの改善には、
肺と腎を強化する。ホルモン剤に頼らない


 アトピー性皮膚炎や花粉症を抑えるために使われる副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の副作用や、食事療法での発育不全が、社会問題化していることはご存じの通りです。
 このアレルギー性疾患が成人の間でも急増していることが、北里大学皮膚科の外来患者調査で明らかになっています。成人型アトピーはステロイド剤の長期服用などもあって治りにくく、西洋医学での治療には決定打がないのが現状です。
 この難治性のアトピー性皮膚炎を、中国漢方ではどのようにとらえているのでしよう。
 東洋医学の知恵として、鼻、のど、気管支、皮膚など、人体の外気と接触する部分は「肺」のグループとしてまとまり、共同で呼吸や有害物質の体内への侵入を食い止める働きをしていると考えられています。痰(たん)として大気中のホコリを排除したり、汗とともに有害物質を排せつしたりするのがその一例です。アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性疾患は、こうした体の防衛反応の過程でおこる病態で、本来自分を守るはずの防衛反応が自分の体をも過剰に刺激して、皮膚や粘膜の炎症としてあらわれるものです。このためアトピーの治療には、肺の強化が主眼となります。さらに「肺と腎は補完し合う」という経験則に照らし合わせて、「肺」のグループの働きを、免疫系やホルモン系(副腎)を支配している「腎」のグループがバックアップしているとも考えられています。これらを総合すると、「皮膚病を治すためには、肺と腎を強化すべし」という治療原則が導き出されるわけです。
 一般的に、アレルギー体質を改善するための基本薬としては、肺と腎を強化する「八仙丸(はっせんがん)」が使われます。これに「温清飲(うんせいいん)」や「消風散(しょうふうさん)」などのクスリを、個々の症状に合わせて併用すると、さらに効果的です。問題はステロイド剤です。これまで西洋医での治療を受けてきた人は、大半がこのクスリを長期にわたって服用しているのが実情です。ホルモン剤は確かに炎症を鎮静させる作用が強く、キレ味のよいクスリですが、長期の連用では副腎の委縮を招き、自然治癒力が低下するという副作用の心配がつきまといます。
 漢方治療ではホルモン剤に頼らず(徐々に使用を減らし、これを断ち切ることも治療のひとつとなります)、体質改善によってアトピーを駆逐しようというものです。中国漢方では、これまで述べてきた治療原則によって、西洋医学に勝るとも劣らない治療効果をあげています。専門家への相談をおすすめします。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)