藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第12回】

血管循環系疾患に注目を集める丹参製剤


 今、世界で一番健康に敏感なのはアメリカ人だといわれています。近年の健康食品ブームの震源地も、ほとんどがこの国でした。
 しかし、血の流れをサラサラにする「活血化お(かっけつけお)」のクスリだけは、メードインUSAというわけにはいきません。「お血(おけつ)」という、病気に対して独特のアプローチ法をもった、中国漢方ならではのクスリだからです。今回は、この活血化お薬の話です。
 中国漢方では、老化の一番の原因を腎(じん)機能の衰え、すなわち「腎虚」ととらえ、老化防止のクスリとして、腎を強化する参茸(じんじょう)補血丸などの補腎薬を紹介してきました。  しかし、これだけで安心できない場合もあります。血管の老化があるからです。欧米の食事スタイルが身につき、中性脂肪やコレステロール値がどんどん高くなっている現代人にとっては、むしろこちらの方が深刻な問題ともいえます。
 汚れた血、よどんだ血、すなわち「お血」は、あなたにも簡単に作り出すことができます。食事を肉食中心にし、酒・たばこ、運動不足、ストレスなどの要素をそろえるだけで十分です。  こうした人の血液は、ドロドロと粘り気があり、流れも悪くなっています。血行が悪くなれば、からだ全体の新陳代謝がとどこおり、老化につながります。
 「お血」の考え方は、中国漢方の古典『黄帝内経』にも記されており、それを改善するための活血化お効果をもった薬草の研究にも、古い歴史があります。丹参(たんじん)、川きゅう(せんきゅう)、紅花(こうか)、赤芍(せきしゃく)などの生薬には、血液の凝固を阻止する力のあることがわかっています。
 中国ではいま、古人の遺産を現代に生かす運動の一つとして、伝統医学と現代医学の結合によって新しい医療の道をさぐろうという試みが積極的にすすめられています。
 活血化おも最重要テーマの一つであり、国内のさまざまな研究機関で、さまざまな処方が発表されてきました。最も目覚ましい成果として注目を集めている活血化お薬に、丹参を主薬とした「冠心2号方」があります。
 この処方には、お血状態を改善する作用があり、中年以降の高血圧など血液・循環系統の障害に伴う頭痛、頭重、動悸(どうき)、肩こりなどの諸症状を和らげます。
 「冠心2号方」から発展した丹参製剤が日本にも輸入販売されていますが、こうした活血化お薬は、高齢化が進み、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など血管循環系疾患の急増が心配されるわが国でこそ、真価を発揮してくれるクスリといえそうです。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)