藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第8回】

肝機能と目の状態を改善する飲む目薬


  「もう、老眼ですね」
 このごろ、どうも目が疲れる、新聞が読みづらいと眼科医に相談してみたところ、こんな宣告。ちょっとしたショックではあります。
 職場にパソコンやワープロなどのOA機器が導入されるにつれて、目の疲れを訴える中年サラリーマンが急増しています。それとともに、老眼になる人の年齢が若年化の傾向をみせているとあっては、若さを自認するあなたでも、さすがに他人ごとではありません。今回は、目に栄養を与え、目の疲れを取りのぞいてくれる“飲む目薬”を紹介しましょう。
 古代中国人が、数千年にわたって積み上げてきた漢方・経験則の一つに、「肝は目を養う」という言い方があります。これは、目と肝臓が密接なつながりをもっていることを教えた言葉です。
 前回も述べたように、肝臓は血液を貯蔵し、気(生命エネルギー)と血のスムーズな流れによって全身の新陳代謝をはかる、まさに“肝賢(かんじん)かなめ”の器官です。この肝臓の機能低下は、代謝異常をひきおこし、それは体の中でもとりわけ敏感な感覚器管「目」の変調として自覚されることが多いのです。目が疲れる、モノがぼやけて見える、かすむといった症状以外にも、目の乾き、痛み、光がまぶしいといったさまざまな訴えが出てきます。
 さらに、体のだるさ、肩こり、気分のイライラ、つめがもろくなる、ふくらはぎがつる、などの全身的な症状も、肝臓の働きが落ちていることを知らせるサインとして見逃せません。
 現代医学では、肝機能の異常を主に血液検査によってチェックします。この場合、かなり進行した段階で発見されることが多いものです。その前段階にあらわれるサインによって、ひどくならないうちに手を打つのが、中国漢方の“未病を冶す”という考え方の基本でもあるわけです。
 さて、目の疲れをとる方剤です。目と肝臓のつながりを考え、肝機能と目の状態をあわせて改善するクスリとしては杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)がよく知られています。
 これは肝腎を強める六味地黄丸に、視力を回復し目の状態を改善する枸杞(くこ)の実と菊花(きくか)を加えた方剤で、中国では“飲む目薬”の異名をもっています。日本でも、古くから視力減退には菊の花のお茶が愛飲されてきました。ストレスで肝が弱り、OA機器で目を酷使する中年サラリーマンにとって、まさに持薬としたいクスリといえます。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)