藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第4回】

夏バテの原因、
体内の「湿」を除く考え方

 「パンダはいま別室で寝ています…」(上野動物園)。パンダはそれでもいいでしょう。しかし、われわれサラりーマンは、猛暑だからといってそういうわけにはいきません。
 なんとなく体がだるい、食欲がない、ファイトがわかない。この時期、サラリーマンには、こんな夏バテの症状が目立ってきます。
 犯人は明白です。高温多湿の日本の夏。それを忘れさせてくれる冷たいビールとクーラー。夏バテの元凶は、こんな「湿」と「冷え」にあるのです。中国には「暑必兼湿」という言葉があります。湿度の高い中国の夏を言い表したものですが、日本の夏もまったく同じです。
 暑さから、冷たいものを多くとりがちです。おまけに、現代人はクーラーというやっかいな代物を手放せません。そのため、体の中の水分は発散しにくく、体内にたまりがちです。中国漢方では、この水分を「湿」と呼んで警戒しています。
 多すぎる「湿」が筋肉にたまると「だるさ」となり、冷たいもののとりすぎは、胃腸の働きを低下させて「食欲不振」をあおります。おまけに、本来は汗となって皮膚から出ていくはずの「湿」が、別の出口を求めて「下痢」にもつながっていきます。
 夏のビール腹。これなども明らかに水分代謝の変調であり、たっぷりたまった「湿」は逃げ場をなくし、やがて夏バテ症状となって表れます。
 中国漢方では、夏を成長と発散の季節ととらえています。陽気は最高潮の時期であり、奔放に活動すべきだとしています。夏の健康法の基本は、動くことで血の巡りをよくし、老廃物を汗と一緒に体外へ排せつすることです。
 分かってはいるけれど、最近めっきりフットワークの衰えを自覚しはじめた中年サラリーマンのみなさん。中国漢方には、体肉にたまった「湿」の症状をとり除いてくれる、カッ香正気散(かっこうしょうきさん)というクスリがあります。消化器や呼吸器などが湿気の影響を受けて弱ったときや、寝冷えによる夏カゼに効果を表します。
 夏場は、このクスリを冷やしてお茶がわりに愛飲することで、夏バテや夏カゼ、下痢を予防することも可能です。「名医は未病を治す」という言葉もあるほどで、発病を一歩手前で阻止する予防医学も中国漢方の重要なコンセプトの一つです。
 次回「医食同源」の考えにもとづき、夏バテを防ぐ食べ物をみていきたいと思います。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)