藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第3回】

体力回復薬の参茸補血丸で
棋力がグーンとアップ

 こんな話があります。Aさんは40代なかば、働き盛りの銀行マン。趣味は囲碁で、このところメキメキ腕を上げていると社内でも評判です。
 そのAさんが、囲碁上達の秘けつとしてそっと教えてくれたのが、なんと中国漢方でした。
 上達の秘薬として紹介してくれたのは、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)という中国のクスリです。このクスリを対局の1時間前に飲んでおけば「一目(いちもく)は確実に強くなる」と自信満々です。
 中国の大きな薬局に行くと、人参鹿茸(ろくじょう)部という売り場があります。若さを保ち、ボケを防ぎたいという願いは、中国も同じです。朝鮮人参と鹿の生えはじめの角(鹿茸)を組み合わせたクスリは、抗老防衰薬としてとりわけ人気が高く、特別のコーナーをつくるほどです。
 参茸補血丸は、そのコーナーで最もポピュラーなクスリの一つ。朝鮮人参と鹿茸が主な成分で、全身の血行をよくし、精力をつけ、体力を回復させるのに、すぐれた効果を発揮します。
 Aさんの場合でいえば、血行促進によって大脳の働きがよくなり、さらに自律神経を安定に保てることが、対局時の集中力につながっているわけです。その効き目は“一目”となるわけですが、囲碁好きの人ならこの一目の威力がどれほどのものかは、まさに一目りょう然。
 前回、腎がパワー不足の状態を「(腎虚(じんきょ)」と呼び、パワーアップのクスリとしていくつかの補腎薬を紹介しました。この参茸補血丸も、元気・活力を生む補腎薬のひとつです。
 無気力でヤル気が起きない、足腰が痛む、体が冷えるといった状態は、腎虚の中でも「冷えるタイプ」の典型的な症状。このタイプには、わが国では八味地黄丸(はちみじおうがん)がよく用いられますが、中国漢方では八味地黄丸一辺倒という使い方はしません。
 性機能の低下や健忘症といった老化の兆しが顕著な「冷えるタイプ」の腎虚には、強壮効果が強く、しかも速効性のある動物生薬配合のクスリがピッタリです。
 老化の度合いに応じて、いくつかのクスリを使い分けたいものです。かなり老化のすすんだ人には至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、中年向けには参茸補血丸、青壮年用には海馬補腎丸(かいまほじんがん)というのがこの場合のクスリ選びの基本になります。

(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)