藤本 肇

(漢方ジャーナリスト) 健康雑誌・書籍などを中心にフリーライターとして活動し、 特に中国の漢方(中医学)事情に詳しい。編集制作会社 「プラスワン」代表

【第2回】

体力のピークを過ぎた中年は
補腎薬を活用しよう

 いつまでも若さを保ちたいという「不老長寿」の夢は、人類永遠のテーマです。中国でも、長い年月をかけてさまざまな抗老防衰のクスリが発見されて、今日に至っています。ハイテクの現代医療も及ばないこの分野では、中国漢方はほかに類をみない一大宝庫といえます。中国漢方で老化のカギを握っているのは腎臓(腎)です。
 ただし、この腎は西洋医学でいう腎臓よりも幅が広い概念で、泌尿器系の働きのほかに、生殖器系、ホルモン系、免疫系にも及び、成長・老化を支配する内臓としてとらえられています。「年をとると下半身からガタがくる」という東洋医学の考え方も、このへんにあるわけです。腎の働きが弱った状態を、中国漢方では「腎虚(じんきょ)」と呼びます。尿が近い、尿の出が悪い、精力減退、腰痛、病気にかかりやすい、耳鳴りや難聴、抜け毛、物忘れがひどい……これらの老化現象は、いずれも「腎虚」のシグナルです。「腎虚」を改善する、つまり腎をパワーアップするクスリが補腎薬です。中国で不老長寿のクスリといえば、補腎薬の仲間と理解していただいてもさしつかえありません。
 4千年とも、5千年ともいわれる中国漢方では、補腎薬についても症状にあわせて、きめ細かな漢方処方を見いだしてきました。
 ひとくちに「腎虚」といっても、熱っぽい、のぼせるといった「ほてるタイプ」、手足が冷えたり、心身ともに活力のない「冷えるタイブ」、その両方を合わせもつ「中間タイプ」の3つがあります。ほてるタイプには六味地黄丸(ろくみじおうがん)、冷えるタイプやその中間型には八味地黄丸(はちみじおうがん)がよく効きます。それぞれのタイプに合わせてクスリを使い分けるのが中国漢方の知恵です。
 さらに、腎の衰えは肺や肝臓、心臓などの機能低下を伴うことがしばしばです。内臓は、腎を中心として五臓六腑が互いに影響しあってベストな状態を保っているからです。
 この場合、六味丸系統のクスリに、ほかの漢方薬をプラスアルファして服用します。肺の衰え(長く続くセキやタンなど)を伴う腎虚に効く八仙丸(はっせんがん)、肝機能の低下(視力の衰え、疲れやすくイライラする)を伴う腎虚に効く杞菊(こぎく)地黄丸、心(しん)の衰え(どうき・息切れなど)を伴う腎虚に効く天王補心丹(てんのうほしんたん)といったクスリがあります。いずれも各人の症状にあわせて、きめ細かなクスリを使い分ける、これが中国漢方の威力の根源です。
 体力のピークを過ぎた中年サラリーマンに、中国の補腎薬はもっと活用されてよいクスリです。
(藤本 肇・漢方ジャーナリスト)